学部3年までに読んできた範囲でのおすすめを挙げてみるテスト

数日前に「これから大学に入学する新入生のために」(http://d.hatena.ne.jp/kanedo/20100309/1268136348)という記事を読んで、駒場の頃は必修をほどほどにし「時間外労働」*1に全力を注ぎ、駒場後半は廃人と化してゲームの大会スタッフやらでヤンチャをし、専門上がっても似たようなことやってた駄目人間にとっては非常にいいプレッシャーになりまして。や、こういう生活してるからこそわかることも多いんですが言い訳でしかないのでそういうことは個人的にしか話しません。
そんなところに「学部生向けのお薦め書籍を集めよう」(http://d.hatena.ne.jp/kanedo/20100312/1268388495)という記事見かけたので乗ってみます。や、まだお前学部生じゃねえかっていうツッコミは禁止で。

まずは簡単にバックグラウンドの紹介から

  • 専門は情報科学、ただし中の人の考えは工学寄り
  • 高2まで文系行く気もあったけど主にコンピュータやるために理系行った
  • 多分重要そうなのが1年のときに国際関係論っぽい内容のゼミやってたこと
  • オーケストラで活動してます
  • それなりにクイズ方面の活動も最近はしてる
  • ここ最近は「横文字の本」しか読んでません*2

こんなもんで大丈夫ですかね。こうでも書いておかないと「何でこいつ理学部なのに歴史の話してんのさ」となるわけで。

ルール再掲

  • 何かの学問に関係する本か、専門家が一般向けに書いた書籍であること。いわゆるビジネス書や小説は、今回は×
  • 予備知識が大学新入生〜学部生レベルでも読めるようなものであること
  • 知的に興味深いものであること。自分が好きな本だとありがたいです

1:文理問わずおすすめ

『ハード・アカデミズムの時代』高山 博

ハード・アカデミズムの時代

ハード・アカデミズムの時代

どうせ関係者の誰かがすでに紹介してそうですが、「これから大学に入学する新入生のために」の記事の内容に沿うと非常に重要な意味を持ってくるのでまず一番に。これに関しては正直回し者乙といわれても仕方ないかなと。
特定の学問の内容というよりは、グローバル化の時代の中で大学の持つ役割が変わってくるだろう、ということを、著者のアメリカ留学時代の経験をもとに考察した本。多少の誇張は否めないだけれど、大学入試を勝ち抜いて安穏としているところに日本の大学の国際的地位の低下の兆候をまざまざと見せられると、そうはしてはいられないと感じるはずです。
この本だと図書館探さないと手に入らないレベルなので関連した内容だとこんな本もあります。歴史学の視点が現代のグローバル化を考える上でどのように重要かを教えてくれます。全く関係ないと思っている分野がどこかでつながってくるということがわかると、「これは関係ないからー」と勉強しなくなることもなくなるでしょう*3

『ネットvs.リアルの衝突 -誰がウェブ2.0を制するか』佐々木 俊尚

ちょっとルールに抵触しそうな内容ではありますが一応。インターネットに関して起こっている問題の入門としてはものすごくよくまとまっているため、「情報と社会」の分野の本としてあえて出してみます。
この分野の本は特にビジネスが関わっていると2年もすれば「何いってるの?」となります。今の時点でウェブ2.0なんて口にしようものなら指さして笑われる時代です*4
で一時期この分野の本ばっかり集めて読んでた人間としては、この本が示している諸問題、著作権破壊や標準化戦争などのテーマは、今でも十分通用する内容が多いです。知的財産分野で活動しようと思っている文系の人たちにも、今の技術的バックグラウンドがどのようなものか、というものについて一度考えを巡らせていただきたいな、というのが提示した理由でしょうか。

2:どっちかっていうと理科系

『プログラムはなぜ動くのか 第2版 知っておきたいプログラミングの基礎知識』矢沢 久雄,日経ソフトウエア

プログラムはなぜ動くのか 第2版 知っておきたいプログラムの基礎知識

プログラムはなぜ動くのか 第2版 知っておきたいプログラムの基礎知識

ド定番。プログラミング言語をわかるだけでコンピュータをわかったつもりになることは危険なことです(自戒を込めて)。コンピュータの動作原理を初心者向けに解説した本。コンピュータの動作原理を知る事は機械工学をやる人やコンピュータサイエンスをやる人じゃなくてもバイオインフォマティックスなどの分野でも応用はあるでしょうし、個人でプログラムを書く人にもよりよいプログラミングへの示唆を与えてくれるでしょう。
ただし、中身がわかったところで「使い方がわかるようになる」というのとは別なので、だからやっぱり理科系向けかな、ということでこっちの方で紹介しました。情報リテラシーは別のところで補完してね、ということです。
この分野についてもっと知りたい場合は通称パタヘネと呼ばれてる『コンピュータの構成と設計』という本だったり最近注目してる『コンピュータアーキテクチャのエッセンス』という本もありますがそちらはどちらかというと専門向けなのでここでは名前を挙げる程度に。

『暗号解読』サイモン・シン

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

フェルマーの最終定理』や『宇宙創成』でも知られているサイモン・シンですが、これを挙げたのは一番深く読んだ事ある本だし自分の専門に一番近いから。ずるいもんですね。
暗号技術の進歩について歴史的な経緯とその技術の概要を解説した本。この人の本すべてについて言えるのですが、サイエンスの面白さを余すところなく伝えてくれるのが魅力です。どっちかっていうとバックグラウンドが理系寄りの人が読んだほうが楽しめるとは思いますが文理問わず薦められるかなと。数学や物理学を深く勉強するきっかけになると思います。

他に挙げたかったけど踏みとどまったもの

  • 『フラット化する世界』『レクサスとオリーブの木』:自分よりkanedoさんのほうが上手く書評まとめてくれそうなので(え
  • カッコウはコンピュータに卵を産む』:まだ読み切ってない。コンピュータのセキュリティを題材にした本。ハッキングの事件の詳細を事細かに追ったもの。ちなみにこれ、高校の文化祭で上下巻あわせて200円で入手。
  • 微分積分の意味がわかる』:どっちかっていうと高校生向けか。理系だったら高校のうちにやっちゃう微積分が意味がわからねえつまらん!という文系学生が読む分には有効だけど自分の周りには数学めっちゃできる文系の人多かったからあえて挙げるまでもないかなと
  • 昔読んだもの:『動物化するポストモダン』『大本営参謀の情報戦記』『サブカルチャー神話解体』『はじめての構造主義』:手元にない。
  • ローマ人の物語』:小説なのでルール違反。

私信

結局歴史学の分野の本紹介できなかったからなんか教えてくれたら代わりにこちらで紹介しますよ>某歴史家の人

*1:自主ゼミや単位に換算されない授業のこと。それに加えて大学外の活動も含めることもある

*2:よくこうやって紹介するけど、洋書なんてごく一部で、数式やソースコードの載ってる本、という意味です

*3:関連性の優先順位付けは重要ですがそれはまた別の話

*4:変な話で申し訳ないですが、2008年末に出た某ノベルゲームですらウェブ2.0が笑い者になっていることも考えるとやっぱりこの分野は紹介しにくい