使える経済書100冊 『資本論』から『ブラック・スワン』まで (生活人新書)
- 作者: 池田信夫
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2010/04/08
- メディア: 新書
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もちろん完全中立なスタンスからのブックガイドっていうのはありえないので、著者のスタンスを本の内容から予想するに、
- 新古典派経済学とケインズの経済学は経済学を自然科学として見ているところに問題がある、としている(「ニュートン力学」の対比がよく出てくる)
- 福祉国家は限界が見えているとして、日本の「市場原理主義批判」に真っ向から勝負を挑む立場
- 「市場」の効果は「不完全な情報でも機能する」こと、ということを何度か強調している(→ハイエクの影響が強い?)
というスタンスからのブックガイド、ということになるだろう。読解しきれてなかったらごめんなさい。
個人的に面白かったのは第5章「イノベーションとは何か」。3年前の論考書き直さないといけない程度の誤解をしていた。これについては機会があったら書きます。あとは最近よく考える日本の制度とかムラ社会的な気質がグローバル化の中でどうなっていくかの話もあったのも好感触。
あと読んでて思ったのは歴史とか哲学の人もちゃんと経済現象を知るべきでその逆も然りということか。人の倫理の考え方はそのグループの規範に影響して法や経済の制度を作っていくし、経済現象は単なる数字の現象じゃなくて人の営みだからそれも哲学の対象に十分になりうる。こうやって考えると受験で政治経済と倫理が軽んじられている現状は社会科学にとっては大きな損失なんじゃないかとも思う。世界史と地理も勉強の方法によっては人の営み・経済の営みを分析するのに役立つんですが暗記科目としてこなされては。
社会科学への興味を大きくそそる本でした。経済分野に一通りの見通しをつけたいと思うなら。
しかし経済学が儲かる学問って思われてるのはほんと微妙な話だな。知らないと騙されるけど、数式弄って現象分析したところで必勝法があるわけじゃないんだし。人の心を動かすことのほうが儲けには本質的な気がする。