2011年漫画総合レビュー

そんなわけで一昨日買った『COPPELION』と『フロッグマン』の続きを買ってきてしまったので12月だけで買った漫画が27冊になったようです。どこぞの誰かさんの影響で少なく見えるのは間違いなく気のせいだ。27冊ってカイジが2シリーズ揃うレベルだぞ…?

ルール

今年は初めてなので、だいたい基準を示す意味でも今年以外に読んだ作品もいくつか挙げての点数付けをしていく感じになります。点数はあくまで個人の独断と偏見による評価であることをお忘れなく。10点満点として、だいたい基準はこんな感じです:

  • 9点台:自信を持って勧められる。とくに9.5以上は歴史に残る作品として紹介されるべきと考える。基本的には完結した作品が対象。
  • 8点台:超良作。ジャンルものであれば題材の着眼点もさることながらその題材を非常によく活かせている作品。
  • 7点台:良作。よく書けてる/描けてると思う線はこのへん。
  • 6点台:いいんだけどもう少し…という作品。
  • 5点台:まぁアリだけどあまり買ったことに積極的意味を感じないライン。
  • 5点以下:買ったものであれば失敗したと思ってるいわゆる地雷ライン。

また、筆者が漫画揃える条件はだいたい以下です:

  • 原則としてドラマ化作品は家族が揃えるのに頼る。例:『ドラゴン桜』『仁』。ただしどちらも個人的には評価は低い。
  • 周囲の友人があまり持ってないものに限る。アニメ化した有名どころの作品は大抵その理由で地下*1だったり友人に頼ったりします。
  • 内容が以下のどれかに該当する(例は今年買ったものです)
  • 情報源は表紙か大宮のJunku.com*2の試し読み冊子が主。

参考としての過去作

ヒカルの碁 - 9.8点、DEATH NOTE - 9.6点、賭博黙示録カイジ - 9.6点

ヒカルの碁に至っては全巻持っている上で完全版が欲しいと思う程度の美しい絵柄、題材の完成度の高さから古典的名作と並んで芸術の域に入った作品と言ってよいと思う。DEATH NOTEは少年ジャンプ史上まれに見るダークな世界観とハードな謎解きで読者をとりこにしたという点で歴史的価値は非常に高いものの後半若干失速した感が否めず若干落ちる。
カイジは独自のゲームのデザインの完成度からゲーム理論の題材として扱われることもあるという題材の良さにとどまらず、ほかの作品ではなかなか描かれることのない人間の暗部を巧妙に描き出しているという点で安定の歴史的作品の域に入るといえよう。続く2作の破戒録・堕天録は扱う題材が少々一般性を失うパチンコと麻雀であるため一般に歴史的作品として語るには少々難しいところがありそうということで1作目よりは少々割り引く。

ラブひな - 8.6点、魔法先生ネギま! - 8.1点

この2作でいえばキャラクターメイキングの妙はどちらにも共通していて、あれだけ多くのキャラクターを同時に登場させつつその個性を失わせない描写は特筆に値する。「記号としてのマンガキャラクター」を先鋭化させた作品の一つといえる。題材の良さとそれをとりまく人間模様、ということではラブひなのほうに分があると判断してこの点数。

スパイラル - 7.5点、涼風 - 7.4点、ノノノノ - 7.0点

後半失速枠の代表。涼風はかなり長く続いてたのに最後の詰めを焦った感が感じられてもったいない。ノノノノはかなり評価してただけに打ち切りが本当にもったいない。

ドラゴン桜 - 5.5点、論理少女 - 5.0点

どちらも題材はいいんだけど題材以上の部分がほんとにもったいないシリーズ。論理少女は萌え枠やるにも物足りない感じだし同じ傾向なら『数学ガール』とかのほうが内容ちゃんと書いてて評価高いです。

以上をもとに、今年読んだ漫画

ぼくらの - 9.8点

SFとしても非常に優れた題材、非常に優れたキャラクターメイキングと人間性の描写、そしてそれを支える大型ロボットやキャラクターの表情の描き込み。文句なしに歴史的作品でしょう。詳細なレビューは当時書いた記事に任せるとして、安定のこの評価つけていいと思います。

あきそら - 9.2点

非常に条件付きではあるが(要するにエロ耐性があるかどうか)題材はよくできていて十分この点数がつくと思う。禁じられた愛という題材の消化に関しては後半の巻が非常によく伏線を回収してくれていて、いくつか蛇足に見える題材が実は終わらせるのを急いでしまったために回収しきれなかったのではないかと思うくらいきれいで切ない終わり方をする。でも蛇足なエロには厳しくありたいのでちょっと割り引く。

天にひびき - 9.0点

音楽関係者には文句なしに勧める作品。『のだめカンタービレ』ではラブコメしすぎてクラシック音楽が背景に隠れてしまってるように思うのですよ。『ピアノの森』はその点うまくやっているように思うけれど、オーケストラの人間としての個人的感情がやっぱり入ってしまうんですかね。主人公とヒロインはそれぞれ恋愛が不器用というか非常に鈍感で、それだけ音楽に純粋に向き合いながら関係を深めていくっていうのはすごく個人的に理想としてるところなのです(笑)。音楽をするモチベーションを非常にかき立てられる作品だったということで完結してないけど9.0点つけたい。今後の展開に非常に期待できる作品ですね。

COPPELION - 8.6点

連載開始が2008年であるということに衝撃を禁じ得ない先見の明。震災後である今だからこそ読まれてほしい作品。原発事故によって首都東京が失われた、という題材を単にパニックドラマに仕立て上げるのではなく(アメリカ人だったらここでミュータントとか登場させてるんじゃないかな)、それによって起こったであろう政治サイドの動き、救出される人たちの人間模様、そしてある種の「超人」であるところのコッペリオンたちの「人間らしさ」の部分を非常によく描いている作品だと思う。
個人的には第1部・第2部には9点台つけたいところではあるが、第3部以降は最近の情勢を鑑みてなのか、能力の設定が大掛かりになってきていたり科学の設定が大雑把になってきていたりして、死都東京を舞台にした単なる能力者バトルものに堕してきている感が否めずもったいない。それでもまだ回収されていない伏線はかなりあるようなので今後に期待できるといっていいだろう。

ナナマルサンバツ - 8.4点

競技クイズという漫画史上前代未聞のジャンル(『国民クイズ』はだいぶ違うよね?)に挑戦した作品。競技クイズに片足突っ込んだことのある人間としてはとにかく芸の細かさに驚かされる作品だ。クイズといったときに想定されるであろうテレビクイズの大掛かりなボタンではなく、競技クイズで使われる早押し機が表紙に描かれているあたりからもうこいつ本気だ、と思ってしまうし、「なぜ山/」などクイズ界の内輪ネタとも言えるようなネタまで紹介されている。クイズ研究会って単に難問のデータベース覚えることに心血注いでる人間じゃないのよ。…とはいっても、まだ始まったばかり感が強い作品。これでプレイヤー間の人間模様だとかがどう出てくるかが楽しみなところ。

あさひなぐ - 8.3点

薙刀部を舞台にしたこれまた特異な題材のスポーツ漫画。ただ、本作の主人公はいわゆるスポ根漫画に登場する主人公の中でも飛び抜けてヘタレな主人公といっていいだろう。「部活界のアメリカンドリーム」というキャッチフレーズに惹かれて入部するものの現実はそんなに甘くなく、結局多くの困難にブチあたることになる。それでも健気にひたむきに壁を乗り越えて?行く主人公にシンパシーを抱く人も多いだろう。正直表紙の眼鏡っ娘に負けて表紙買いしたけど、題材もいいしその表紙の眼鏡っ娘(主人公)の成長に期待できるしよく描けてると思います。
ちなみに1巻の帯は松岡修造がコメントを書いてたりする。

自殺島 - 7.8点

題材の衝撃的さは非常に評価できる。自殺未遂者が生への希望を取り戻すというとずいぶん明るい能天気な話に聞こえるが、極限状態に来て初めて生きることの意味に気づかされ、ある人はそもそも生への意志を捨て、ある人は闘争に走り、ある人は自然の中で人間の醜さや生命への感謝に気づく、というドラマがダークなタッチで描かれている。しかし若干作画がブレーキしてしまっているかなという感じ。もっともこれ作画が美しかったらそれはそれでグロいわけだが。第4巻の予告見る限りでは先の展開も非常に楽しみだ(現在6巻まで出てます)。

フロッグマン - 7.6点

表紙買いした結果が大失速だよ!これまた主人公がドヘタレなわけですが、その主人公がヒロインとともに選手としても人間としても経験を積んでいくところが読みたかったのに!そして途中までちゃんとそういうシーンあるのに!キャラクターとしてヒロインの子は非常によいと思います。おっとり天然系美少女ってほんとにいいところ描いてきたなぁという感じ。そこまではよかった。でもなんか伏線も回収しきれてない感否めないし、最後は三角関係を突然動かしにかかって終わらせにかかった感が否めないし、お色気枠としては評価するけど大失速感が否めず絵柄に免じてこの点数で止まってる感じ。うおーもったいねー!というわけで絵柄は評価するんだけど水泳部ものの作品ならおとなしく『ラフ』のほうがいい。
一般的にそうなんですが、お色気で売ってる作品にありがちなストーリーの線から外れたエロネタ回はどうしても受け入れられないです。それで抜ければいいんだけど(いいのかよ)、大して興奮もしないような内容のときには蛇足感しか覚えず。

放課後のカリスマ - 7.5点

題材まではいいんだけど題材とキャラクターの数をそこまでうまく活かせてないかなぁという感じがどうしてもしてしまってもったいない。一方で別枠で展開されている『放課後のかりちゅま』のプレビューはなかなかよさそうな印象。歴史上の人物を同じ時代に持ってきたら?というギャグテイストでは案外いけるんじゃないかな。本編は今後の伏線の回収如何によってだいぶ印象変わってきそう。

魔法少女まどか☆マギカ - 7.4点

アニメは9点台上位作品だから黙ってアニメ見とけ。
いやコミカライズも悪くないんですが、詰め込んだ感とアニメの演出意図に反すると思われる脚色がどうしても気になる。

レンズのむこう - 7.0点、めがねのひと - 6.8点

眼鏡っ娘ものの代表的な作品ということで買ったはいいんですが、絵のタッチが個人的に合わなくて残念。絵柄に期待して買ったものは絵柄気にしちゃうのです。2作品の点数の差は内容が気に入ったかどうかの差。

チェーザレ 破壊の創造者 - 6.7点

これもまどマギのコミカライズ同様、あえて漫画にしなくてもよかったような気がしてならない、という意味でこの点数。小説でやれば読者も獲得できそうだし1冊あたりにボリューム詰められるしよかったのではないか、という気がしてならない。題材自体は本邦未翻訳の伝記ということで歴史ファンには勧めたいのだけど1冊あたりの価格とボリューム考えるとちょっともったいない感じがしてしまって惜しい。

鏡野町のカグヤ - 6.3点

草凪とんぼ先生は以前からサイト見てたので漫画出したってことで買いに走ったんですが、ちょっとストーリー設定がわかりにくかったり1話ごとにどういう結末迎えたのかわかりにくかったりで漫画としてちょっと残念。おっぱい絵師さんとしては非常に優れた絵師さんで今回もイメージに違わずおっぱいは爆発してました。


以上ここまで。

来年の展望

とりあえず買うこと決まってるのは『ひとひら』『ひとひらアンコール』『榊美麗のためなら僕は...ッ』の3作品。アニメ見た感じだと普通に『ひとひら』は8点台半ば以上行くんじゃないかという気がする。
あさひなぐ』『自殺島』『COPPELION』『ナナマルサンバツ』は積極的継続、『放課後のカリスマ』は余裕があったら、あとは例のとらのあなポイント2000点相当を2日でお買い上げなさった方におすすめ聞いていってという感じでしょうか。

*1:学校の学生控室

*2:ジュンク堂の漫画・ラノベ専門フロア